いやはや中国にはかなわない

執筆者:成毛眞2004年5月号

 ある中国の国営企業のお手伝いをさせてもらっている。その会社が日本企業に投資をするときの黒子を引き受けているのだ。中国でも指折りの規模を誇る生産財製造会社なのだが、日本の同業者を買収したいという。対象となる会社の選定や事前交渉がわが社の役割だ。 お会いする前には「売国奴」という言葉がうかんだ。日本の誇る長年培ってきた技術を易々と外国に売り渡してなるものかという、妙な愛国心を持っていたのだ。将来、最大のライバルになるであろう中国に、生産財の技術まで持っていかれては日本は終わりだとも考えた。 ところがその会社の考え方を聞いて少し落ち着いた。日本の会社を買収後、生産は日本国内で継続、会社名やブランドどころか雇用もそのままで、中国で完成品を売るだけだという。つまり、中国の販売会社が仕入先の製造元へ投資するということなのだ。過剰借入金で資本不足の中堅製造業にとってはありがたい話だ。さらに販路の拡大も狙え、一挙両得。 さらに過去の成功事例を聞いて驚いた。すでにその中国の会社は破綻した日本の中堅製造業を一社買収し、再生に成功していたのだ。成功の秘訣を聞くと、中国人の社長を一人派遣し、ごく普通に経営したのだという。定年退職した中卒の技術者が鍵だと見た社長は即時に再雇用し新製品の開発をはじめた。同時にこれまでの縁故的仕入れを見直し一気にコストを下げた。一年で黒字化し、中国企業に買収される前にリストラした社員をも呼び戻したのだという。

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