泥沼にはまったインドとフランスの関係

執筆者:ラムタヌ・マイトゥラ2004年5月号

[ニューデリー発]今年二月、フランスのドビルパン外相(現・内相)がインドを訪れた。わずか三十六時間の慌ただしい訪問だった。 ドビルパン外相は、九〇年代に外交官としてニューデリーで三年間を過ごした、いわば“知印派”だ。今回、同外相はヤシュワント・シンハ外相と会談したほか、抗議に訪れたシーク教徒の指導者たちとも友好的に対面した。その抗議とは、フランス政府がシーク教徒の信仰の証とも言うべきターバンやベールの公の場での着用を禁じたことに対するものだ。フランスが禁じたのはイスラム教徒のスカーフだけではなかったのだ。 表面上は、これまでと変わりなく見える印仏の関係だが、実は、深刻な膠着状態に陥っていることを両国はともに認識している。 フランスにとっては、インドの現地でスコーピオン型ディーゼル潜水艦六隻を建造し、インド海軍に売却することがかねてからの懸案だった。推定十六億ドルとも言われる大きな商談だが、三年間も交渉を続けながら、未だインド政府が契約に応じないことにフランスは業を煮やしている。 伝えられるところでは、インド側も何度か潜水艦購入を閣議にかけたようだが、昨年、アリヨマリ仏国防相が訪印し、売込み攻勢をかけたにもかかわらず、結論には至っていない。

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