日本経済が抱える「地政学リスク」の実像

執筆者:小田博利2004年5月号

はたして日本は、マネーの安全地帯と言えるのか。外国人投資家が支える日本株は地政学リスクのただ中にある。そして、頼みの中国経済にも変調の兆しが―― 金融の三月危機に見舞われずにすんだと思ったら、全世界的な地政学危機である。中でもイラク情勢が泥沼化の様相を呈してきた。イスラム教シーア派の指導者、ムクタダ・サドルの率いる私兵「マフディ軍団」が急速に台頭し、米軍も持て余し気味になっている。旧フセイン政権の中核であるバース党関係者やイスラム教スンニ派ばかりでなく、味方にするはずだったシーア派の一部も敵に回しだしたようだ。「ソマリアの亡霊」が米国を徘徊している。三月三十一日に、イラク中部の都市ファルージャで、米国人四人が殺害され、その遺体が引き回される光景を、米国のテレビが放映したからだ。ソマリアでは米軍兵士の遺体が自動車で引き回される光景が放映されたことが、全米の家庭にショックを与え撤退の引き金になった。 その二の舞を恐れるブッシュ政権は、テレビを初めとするマスコミに報道自粛を要請した。「一部イラク人の蛮行」をホワイトハウスは厳しく非難した。遺体引き回しは言語道断だが、ひとつ見落とされている点がある。殺された四人は純粋な民間人ではなかったことだ。米軍に軍事サービスを提供するプライベート・ミリタリー・カンパニー(PMC)と呼ばれる会社の契約社員だったのだ。

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