昨年十二月の下院選と今年三月の大統領選で圧勝し、宿敵の新興財閥の抑え込みにも成功したロシアのプーチン大統領。その次の餌食は、首都モスクワのルシコフ市長(六七)との見方がもっぱらだ。 モスクワには海外からの対露投資の五四%、ロシアの富の八〇%が集中する。市長は一九九二年の就任から十年以上の歳月を費やし、これらの富をコントロールする仕組みを構築。今回の大統領選ではプーチン支持に回ったものの、首都に渦巻く膨大な資金へのアクセスを大統領陣営に許さず、大統領周辺の怒りを買った。 モスクワの建設ブームを利用し、トルコの業者と組んで巨額の資産を築いた市長には汚職の噂が多い。クレムリンはこれを脅しの材料に、年末までの辞任と形式的なポストである大統領顧問への就任を求めている。市長の後任には、旧ソ連国家保安委員会(KGB)に十八年在籍したアレクサンドル・グロモフ中央連邦管区大統領副全権(五七)の就任が有力だ。 市長は四月に発足した日露賢人会議の座長も務めており、ロシア側の「賢人」は市長の息がかかった人物ばかり。市長失脚なら賢人会議の空中分解も予想される。

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