五月二十二日にイラクのイブラヒム・アル・ウルム石油相(当時)が出した声明が波紋を広げている。同石油相が「我が国の巨大な自然炭化水素資源を効率的かつ低コストで開発するために、イラク国営石油会社の復活や石油下流部門の再編を含む包括的な石油産業の再編を行ないつつある」と述べ、イラクの石油産業改革の全面的な見直しが進んでいることを示唆したからだ。 昨年四月にロンドンで開かれた戦後イラクの石油政策を検討する会合では、石油産業の民営化を柱とする大胆な改革案が合意された。しかしその後は、テクノクラートや技術者、労働者が数多く残った石油省をはじめとするイラク石油産業でナショナリズムが高まり、石油産業の民営化案や外資への開放案は後退を余儀なくされていた経緯がある。 国営石油会社が復活することになれば、米国がこれまで描いていたような民営化された石油企業を通じてイラク石油資源をコントロールするというシナリオは修正を余儀なくされる。大統領選挙戦の本格化を控えたブッシュ政権にとって、イラク戦争の「戦果」が否定されかねない問題がまた一つ発生したといえる。

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