中国大陸と台湾を分かつ台湾海峡に事実上の停戦ラインともいうべき境界線がある。中国が海峡の軍備を強化する中、台湾がこれまで曖昧にされてきたこの境界線、いわゆる「中線」の位置を明示し、その意図をめぐって憶測を呼んでいる。 台湾の李傑・国防部長は五月末、中線が北緯二六度三〇分、東経一二一度二三分から北緯二三度一七分、東経一一七度五一分に至ると述べ、一方的な線引きを宣言した。台北の外交筋は、陳水扁総統が中線を明確にすることで、将来の独立に向け布石を打ったと指摘。一方、台湾の軍事筋は、中国軍が軍事演習を行なう際、中線をどこまで越えるかを見て、中国側にどれだけ台湾侵攻の意図があるかを見抜くのが陳政権の狙いと分析する。 台湾と中国は従来、中線を曖昧にすることで決定的な軍事衝突を避けてきた節がある。ワシントンの外交筋の間では「中国の動きに対抗して米国が台湾海峡に大規模な軍を展開させる際の判断基準として、米側が台湾当局に中線を明確にさせたのではないか」との推測も出ている。

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