新自動車政策が狙う外資メーカーの利用法

執筆者:五味康平2004年7月号

 中国政府は六月一日、「新自動車産業発展政策」を公布した。十三章七十八項目からなる幅広い政策の中で、日本を含む外資の自動車メーカーの目を引いたのは、第一章の「政策目標」に掲げられた「二〇一〇年までに世界の主要な自動車生産国となり……国際市場へ大量の進出を果たす」というくだり。中国は昨年、四百四十四万台(バス、トラック含む)の車を生産し、四百三十九万台を販売した。つまり需給は国内でほぼ均衡しており、「国際市場へ大量の進出」はかなり大胆な目標と言えるからだ。 その実現のために、中国政府は外資の利用を考えている。新自動車産業政策では、一五%以上のシェアを握ると広い自主裁量権を持てるなど、自動車メーカーにシェア引き上げの大きなインセンティブを与えた。ここから窺えるのは、外資メーカーに大型投資を競わせて過剰生産に誘導し、余剰能力を輸出に向けさせようという狙いだ。中国政府はこれまで、広州で乗用車生産を軌道に乗せたホンダに対し、輸出専門メーカーとして新たに「本田汽車」をホンダの六五%出資で設立させるなど、輸出型拠点にインセンティブを与えてきた。同様の優遇策が新政策にはっきり盛り込まれたと言える。 実際、最近のGM、フォード、トヨタなど外資系メーカーの生産能力増強は、内需の伸びの見通しをはるかに上回っている。GMは二〇〇七年までに上海を中心に生産能力を現在の二・五倍の年産百三十万台に増強する計画を発表、フォード・マツダグループも南京に新工場を建設し、年産六十万台体制を構築する計画だ。日本勢も武漢に工場を新設する日産自動車やトヨタなど投資意欲は強い。

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