中欧に浮上する“新ハプスブルク経済圏”

執筆者:北村隼郎2004年7月号

EU拡大を機に加速し始めた中欧経済の発展。その背景には、“ハプスブルク経済圏”の復活があった――[ブダペスト発]中欧に「ハプスブルク経済圏」が再浮上しつつある。その引き金となったのは、五月一日にハンガリー、ポーランド、チェコ、スロバキア、スロベニアの中欧五カ国が欧州連合(EU)に加盟したことだ。かつて国土の全部または一部がハプスブルク・オーストリア帝国に属していた中欧五カ国では今後、通貨ユーロの導入などを通して地域の一体化が一段と加速することが予想される。帝国解体から「失われた九十年」を経て復活しようとしている多民族共存の経済圏は、拡大したEUの中でも要注目の地域になりそうだ。 中欧の各地で最近、ハプスブルク帝国時代のリバイバル・ブームが起きている。 ハンガリーやチェコの地方を車で走ると、共産時代の味気ない四角いビルが朽ち果てるままにされている一方で、帝国時代の古い石造りの建物がせっせと化粧直しされている風景にしばしば出くわす。ポーランド南部の都市クラクフでは、帝都ウィーンに走っていたのと同じ「フィアカー」というタイプのしゃれた二頭立ての観光馬車が走り始めた。ポーランドでは、“最後の皇帝”フランツ・ヨーゼフ一世の肖像画をあしらったミネラルウォーターという、およそ共産時代には考えられないような品物も出回り始めた。

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