サミットの首脳たちが目を背けた現実

執筆者:小田博利2004年7月号

経済では「勝利宣言」が出されたに等しいシーアイランド・サミット。目を凝らせば、日本頼みの米国債市場や資産を目一杯膨らませたヘッジファンドが見えるはずだが……。 サバナ(Savannah)。熱帯、亜熱帯の大草原を意味するサバンナ(savannah)と同じ名前のこの街が、シーアイランド・サミット(主要国首脳会議)の最中、新聞やテレビにたびたび登場した。プレスセンターの置かれたこの街は、サミット会場のシーアイランドから百キロ以上も離れた土地にある。 サバンナ? 先進国経済についてはほとんど何も語らなかった今回のサミットは、スーダンの紛争終結のためには共同声明を出した。その元々の意味はアフリカ・スーダン地方の樹木のない平原のことなのである。 二〇〇一年のジェノバ・サミットが反グローバル化を叫ぶデモ隊の標的になって以降、サミットは大多数の報道陣を締め出した場所でとり行なわれるようになった。首脳達の一挙手一投足を見てきたように伝える報道の渦は、ピョンヤンの日朝首脳会談を報じたニュースの山と同様、バーチャルな情報空間の出来事にほかならない。 BRICs(ブラジル、ロシア、インド、中国)が台頭するなか、中国を除いたサミットには意味がない――。日本のメディアには、中国に名を借りたしたり顔の解説が横行する。

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