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池内恵の中東通信

池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。

執筆者プロフィール
池内恵
池内恵 東京大学先端科学技術研究センター グローバルセキュリティ・宗教分野教授。1973年生まれ。東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程単位取得退学。日本貿易振興機構アジア経済研究所研究員、国際日本文化研究センター准教授を経て、2008年10月より東京大学先端科学技術研究センター准教授、2018年10月より現職。著書に『現代アラブの社会思想』(講談社現代新書、2002年大佛次郎論壇賞)、『イスラーム世界の論じ方』(中央公論新社、2009年サントリー学芸賞)、『イスラーム国の衝撃』(文春新書)、『【中東大混迷を解く】 サイクス=ピコ協定 百年の呪縛』 (新潮選書)、 本誌連載をまとめた『中東 危機の震源を読む』(同)などがある。個人ブログ「中東・イスラーム学の風姿花伝」(http://ikeuchisatoshi.com/)。

2021年の中東を回顧する(4)人権侵害をもたらす監視技術の輸出規制でイスラエル企業が対象に

民主化を阻害するデジタル技術の輸出管理 バイデン米政権は12月9・10日に「民主主義サミット」を主催したが、サミット開会に合わせて9日に「民主主義再生のための大統領イニシアチブ(Presidential Initiative for Democratic Renewal)」を発表した。  このイニシアチブで…
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2021年の中東を回顧する(3)シリアの独裁者アサドの静かな帰還:大量虐殺の後に

「アラブの春」による政権への批判に対して、政権が軍事力による封殺という手段で対峙したシリアでは、10年に及ぶ陰惨な内戦が続いてきた。シリア内戦には、イランがアサド政権を支援して介入し、レバノンのヒズブッラーも駆使して、影響力を強めている。これに対して、トルコ…
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2021年の中東を回顧する(2)民主化の逆行:スーダン・チュニジア・リビアにエジプト軍政モデルは伝播するか?

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「民主主義のためのサミット」での中東諸国の不在 バイデン米大統領が呼びかけた「民主主義のためのサミット(The Summit for Democracy)」が12月9日と10日、オンラインで行われた。台湾も含む111の国が参加したとされる。「権威主義に対する防衛」「汚職への対応と闘い」「…
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2021年の中東を回顧する(1)親米・反米陣営の横断と歩み寄り

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サウジのムハンマド皇太子がGCC諸国を歴訪 サウジのムハンマド・ビン・サルマーン皇太子が、12月6日から10日にかけて、湾岸協力会議(GCC)諸国の5カ国を歴訪した。オマーン(6日)、アラブ首長国連邦(UAE)アブダビ(7日)・同ドバイ(8日)、カタール(9日)、バーレーン…
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サウジの「ネット・ゼロ」目標のタテマエとホンネ

10月23日、サウジアラビアが、2060年までに「ネット・ゼロ(温暖化ガスの排出量を実質ゼロとする)」目標を発表した。10月31日から始まる国連気候変動枠組み条約第26回締約国会議(COP26)を前にしてサウジの首都リヤードで開催した「サウジ・グリーン・イニシアチブ」の舞台…
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「インド太平洋」に目を向け始めた中東

掲載されたばかりの、サウジ系『シャルクルアウサト』紙への定期寄稿コラムの今回のテーマは、「中東の終わり、インド太平洋の時代の始まり」である。ساتوشي إيكوتشي، المنافسة في «منطقة المحيطين»... ونهاية عصر الشر…
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ターリバーンの政権掌握で外交的地位を高めるカタール

8月31日の午前0時(アフガニスタン現地時間)、米軍がカーブル撤収を終え、ターリバーンが20年ぶりにアフガニスタンの支配者となった。ここで外交的地位を上昇させているのが、湾岸産油国・天然ガス大国のカタールである。2001年にターリバーンは政権を追われ、指導者は各地に…
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米国「ベスト・アンド・ブライテスト」の死角:故ラムズフェルド国防長官の"Unknown Knowns"

アフガニスタンからの米軍の撤退と、ターリバーン勢力の全土・首都カーブル制圧をめぐって、米国の国内政治の文脈でも、日本など米同盟国の国内政治・外交安全保障論の文脈でも、話題が沸騰しており、それらは重要だが、やや極論を言えば、「負け戦での撤退のやり方と責任の所…
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アラブ・メディア20年の変貌 その内在的観察

中東の20年前と現在との違いといえば、メディアの双方向性の度合いが著しく上がったことがある。これは中東の一般市民が、国による上からのテレビ放送や統制された新聞による世論誘導を回避して、スマートフォンで撮影した映像をSNSで発信できるといった、「アラブの春」で顕…
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中東の10年・20年におよぶ変動の「決算」に寄せて

中東で、10年、そして20年単位の歴史の節目というべき事象が相次いでいる。「10年」というのは「アラブの春」からの10年である。「アラブの春」の長期的・大規模な変動の口火を切り、唯一の民主化の成功例とされてきたチュニジアで、7月25日、カイス・サイード大統領が、緊急…
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エジプトのナイル川上流諸国への外交攻勢

一般財団法人中東協力センター(JCCME)の『中東協力センターニュース』には、かなり長い間、定期的に寄稿の機会をいただいている。以前は「連載」していた時期もあり、最近は忙しくて、年に数回程度だが、毎回苦しみながら一定の規模のレポートをまとめている。今回はエジプ…
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ロウハーニー外交の通信簿:最高指導者ハメネイ師による厳しい評定

イランで8月3日ごろ(5日という報道もあるが)にロウハーニー大統領が任期満了で退き、保守派で、最高指導者ハメネイ師の後継者にも擬せられるライースィー師が大統領に就任する。それに先立って、ロウハーニー政権の成果を、ハメネイ師を交えて検証・評価する、いわば「通信…
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「意識高い系」アイスクリーム屋Ben & Jerry'sのBDS運動参加が示す米・イスラエル関係の深部の亀裂

イスラエルの内政・外交を騒がせるBen & Jerry's騒動について、これが直接的に大きな影響をもたらすものではないにしても、様々な重要なものを表出しており、また何らかの大きな変化のきっかけや兆候となるかもしれないので、いくつかメモをしておこう。最新の動きとしては、7…
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NSO社のスパイ・アプリ問題でイスラエルが感じ始めた逆風

イスラエルの外交に逆風が吹き始めている。米トランプ前政権とネタニヤフ前政権の強固な関係を通じて「我が世の春」を謳歌し、中東国際政治に主導権を握っていた感のあるイスラエルだったが、トランプ大統領の再選失敗による強力な庇護者の喪失、2年間で4回の選挙を要したイス…
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ライースィー政権でイランの「二元外交」は解消されるか

イラン核合意(JCPOA)の再建交渉は、結局のところ、ロウハーニー政権の元では妥結されず、ライースィー政権に持ち越されることになった。Iran will not return to nuclear talks before new government is formed in Tehran, The Washingon Post, July 14, 2021.Exclusive: I…
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イラン「革命青年」の秋

6月18日に投開票が行われたイランの第13期大統領選挙については、事前に分析を二本載せており、現地の特派員がリアルタイムで二本の記事を書いてくれてもいる。日本の一般の新聞でもかなり詳細に報道されていた印象がある。ここで多くを付け加える気がしないが、一点、改めて…
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イスラエル政治はネタニヤフ時代の「悪縁」を断ち切れるか

6月には中東政治の今後の起点となる重要な事象が複数生じた。そのうち二つを挙げれば、一つはイスラエルでのネタニヤフ首相退陣・ベネット=ラピド政権発足であり、もう一つはイラン大統領選挙でのライースィー候補の勝利である。いずれも大きな事象で、月が改まる前に「中東…
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イラン国内開発ワクチンは「西でもなく東でもなく」

新型コロナウイルスへのワクチンが各国の内政や、外交・覇権競争の主要課題となっている現在である。ファイザー社、モデルナ社、アストラゼネカ社、ジョンソン&ジョンソン社などの欧米系の巨大製薬企業がそれぞれの製品を競い、mRNAをはじめとする最先端技術の迅速な応用が進…
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イラン大統領選挙は事実上ライースィー候補と現体制への信任投票に

6月18日に投票が予定されるイラン大統領選挙で、5月25日、監督者評議会(護憲評議会とも呼ばれる)による立候補届出者の審査と選別結果が、内務省により発表された。報道によれば、次の7名の立候補が認められた。Saeed JaliliSeyed Ebrahim RaisiAlireza ZakaniSeyed Amir Hos…
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イラン大統領選挙の本命は保守派のイスラーム法学者ライースィー師

6月18日に投票のイランの大統領選挙の立候補が締め切られた。主要な立候補者は、エブラーヒーム・ライースィー(ライシ)司法長官と、アリー・ラーリジャーニー前国会議長の二人と目されている。いずれも保守派と目される。イラン大統領選挙の仕組みと機能イランの大統領任期…
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