池内恵の中東通信
池内恵(いけうちさとし 東京大学教授)が、中東情勢とイスラーム教やその思想について日々少しずつ解説します。
これから、米・イランそれぞれが国民・政治勢力に説明できるような玉虫色文言が明らかになるのでしょうが、例えばこんなところが漏れ伝わってくる。イランの核開発施設を、「破壊するか国外に撤去するのではなく、解体してイラン内に貯蔵する」というところが一つの外交的妥協…
イラン核開発交渉で合意。Iran, big powers clinch landmark nuclear deal, July 14, 2015.
トルコで反政府武装闘争を繰り広げてきたクルド独立派PKKは、関係の深いシリアのYPG(クルド人民防衛隊)が軍事的に台頭したのに触発されたのか、あるいは危機感を高めたエルドアン大統領の動きを牽制しているのか、対トルコ政府で対決姿勢を強めている。7月11日の声明で、ト…
何度も出た話ですが、ウィーンで延長に延長を重ねた交渉が、7月12日(日)中にも妥結かとの噂が、特にイラン側から出ている。米や欧の外交官は12日中には物理的に詰めができないと冷静。ただ、13日にも合意に達するという観測が出ている。ウォッチャーたちも疲れ果て「今日は…
昨日のカイロのイタリア領事館前の爆破について、エジプトでの「イスラーム国」傘下の組織を名乗るツイッター・アカウントで犯行声明が出された。真偽は判定しようがない。Egypt's ISIL affiliate claims attack on Cairo consulate, al-Jazeera English, 11 July 2015.Islami…
今朝のカイロの爆破、イタリア領事館を狙ったというよりは、カイロの都市交通の麻痺を狙ったのか?ガラー大通りが7月26日大通りと交差する場所にイタリア領事館がある。言葉で説明するのが難しいが、どちらも大通りの上に高架通りが走っている。カイロ中心部でナイル川を渡…
ガラー大通りあるいはその上の10月6日橋は誰もが通らなければならない幹線道路である。要人の車の通過を狙った爆破の狙いが外れたのかもしれない。しかし爆発は土曜日の朝6時20分から30分ごろというので、もしかすると誤爆かもしれない。そうであれば、本当はどこの誰…
カイロ中心部で7月11日の早朝、イタリア領事館が爆破され、少なくとも1名が死亡。早朝であったため死者は少ないかもしれないが、ツイッターで伝わってくる被害の規模は甚大。大規模な爆発物が用いられたとみられる。カイロにはイタリア大使館(ガーデン・シティ)とイタリ…
・・・三船敏郎みたいな位置づけ、と言えば分かるのかな。Legendary Egyptian actor Omar Sharif dies at 83, al-Jazeera English, 10 July 2015.
7月10日、カイロで、エジプト出身の俳優オマル・シャリーフが死去。1962年の『アラビアのロレンス』(デービッド・リーン監督)でロレンスとぶつかりながら民族独立に目覚めていく高貴な出の若者「シャリーフ・アリー」の役を演じて以降欧米映画界で著名となり、『ドクトル・…
なにしろ1975年から2015年まで40年間もサウジの外相をやっていましたからね〜。最後の方は会議でろれつが回っていないところがユーチューブに流れたりしていた。サルマーン国王就任後、サウジ王政は一気に若返りを図ったが、そこでサウードは勇退した形になっていた…
Deadlines, red lines, bedtimes get no respect at Iran talks, Reuters, July 9, 2015.「デッドラインもレッドラインもベッドタイムもみんな破られている」もはや適当な語呂合わせで報じるしかない記者たち。眠れぬ夜、ウィーンのホテル業界だけが特需で大儲けなどとも言わ…
6月30日までに最終合意するはずだったイラン核開発問題交渉が、期限を7月10日朝まで延長していたが、また延長。無限に延長するわけではないとケリーは記者会見で言いつつ、ザリーフは記者に「ずっといる」と言ったとか言わなかったとか。要するに、交渉団の間の関係は極…
北部のシーア派系フーシー派と、サウジが支援するハーディー大統領派が争う間に、辺境地域ではAQAPが支配領域を獲得している。「イスラーム国」もフーシー派のモスクに自爆攻撃を相次いで仕掛けるなど存在感を示しているが、イエメンではAQAPの方が優勢。南東部のムカッラーを…
シリアやイラクとは異なり、イエメンとリビアでの内戦は、辛うじて交渉の枠組みがある。ただし脆弱。3月のサウジの介入を活気に全面的な内戦に突入していたイエメンが、ラマダーン月を理由に人道目的の一時停戦で合意した模様。ただしすぐに破られる可能性がある。また、ラマ…
英国外務省は、チュニジア旅行中の自国民に退避勧告。48時間以内に退避させるよう臨時便を手配させているとのこと。6月26日のチュニジア・スースでのテロの直後は、way of lifeを変えない、と退避勧告は出さない姿勢だったが、「さらなるテロ攻撃の可能性が高い」と判断…
読んで字のごとくの論評。トルコは「イスラーム国」と戦うというよりも、クルド独立が嫌だから、シリア介入へ思い腰をあげたんでしょ?という、トルコに働いてもらいたいのに働いてくれなくて苛立っているアメリカの側の論評。対クルドでトルコがシリア介入するなら一層ややこ…
オバマ政権の対「イスラーム国」の特別調整官ジョン・アレン退役大将とウォーマス国防次官が7月7日から8日にかけてトルコを訪問して協議した。U.S. President Barack Obama’s special coordinator in the fight against the ISIL, Gen. John Allen, U.S. Undersecretary o…
シリアのクルド勢力は、トルコの軍事介入を牽制しています。Syria’s Kurds tells Turkey not to intervene militarily, Hurriyet Daily News, July 2, 2015.
エルドアン大統領が、「イスラーム国」討伐のためだけでなくむしろ、混乱の結果としてのシリアへのクルド国家樹立(とそれによるトルコへの波及)を阻止するという目的のために、シリア介入への姿勢を強めているのに対して、トルコ軍は消極的な反応だという。世俗主義派のヒュ…
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