台湾の中堅半導体メーカーが元気だ。世界的なIT(情報技術)好況を背景に、代表的な半導体メモリーであるDRAMを手がける力晶半導体、茂徳科技、南亜科技、華邦電子の四社は二〇〇四年四―六月期に過去最高水準の利益を計上した。四社はそれぞれ新工場の建設計画を打ち出しており、投資総額は一兆円を超える。業績を好感し、華人社会独特のリスクマネーが台湾に流れ込んでいる。新工場は二〇〇五年後半から順次稼働する。 彼らはDRAMの世界シェアで各社五%以下の下位メーカーだが、見くびるのは早計だ。新規参入に近いが故に、直径十二インチの大型シリコンウエハーを使う最新鋭工場を建設できる。ウエハー一枚当たりのDRAMチップの生産個数が従来の八インチウエハーの二倍以上となり、生産コストが三割は下がると言われる。標準品で一個四―五ドルと損益分岐点に近い価格帯で勝負しているDRAMビジネスでは決定的な差となる。 十二インチ工場の建設には一カ所で二千億円以上の設備投資が必要とされる。巨額投資を嫌う米マイクロン・テクノロジーなどは既存の八インチ工場の生産性向上で対応してきたが、裏目に出てシェアをじりじりと落とし始めた。投資能力を持つ台湾勢の課題は、近く線幅百ナノメートル以下に突入する回路の微細加工技術をものにできるかどうか。最大手の韓国サムスン電子の微細化ペースにある程度追随できれば、台湾勢の台頭で五―十年後には世界のDRAM産業の勢力図が変わる可能性もある。

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