日本の新聞が「部族対立」という言葉でアフリカの紛争を説明していたら、それはウソだと思った方がよい----。新聞記者の私がそう書くと何事かと思われるかも知れませんが、私はそう思っています。私はこれまで、新聞記事でも雑誌や単行本でも、部族対立という言葉でアフリカの紛争を説明したことは一度もありません。ケニアの現職閣僚を含む6人が、近くオランダ・ハーグの国際刑事裁判所(ICC)に「人道に対する罪」で召喚されるというニュースを聞き、改めて何でも「部族対立」の枠にはめたがる報道の過ちについて考えています。

 ケニアでは2007年12月に大統領選がありました。現職のキバキ大統領と野党候補のオディンガ氏が一騎打ちを演じた結果、キバキ氏が再選されました。現在の大統領はキバキ氏、その後、キバキ氏と政治的に「和解」したオディンガ氏はキバキ政権で首相を務めています。

 この大統領選では、キバキ再選の開票結果を巡ってケニア各地で暴動が発生し、およそ1200人が殺害され、暴力を恐れて約50万人が国内避難民となりました。

 一連の暴動のきっかけは、大統領選が「不正」の疑いが極めて強いものであったことでした。投票から開票へ至る経過の詳細については省略しますが、開票作業終盤におけるキバキ氏の票の異様な増え方は、当時ケニアでこの選挙を取材していた私にとっても衝撃的でした。

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