ソフト、ハード両パワーで南進を続ける中国

執筆者:樋泉克夫2011年12月12日

 過般のASEAN首脳会議以降、ワシントンがアジア重視路線を打ち出し、ミャンマー政権が従来の親北京路線からの転換とも思われる動きを見せ、さらにクリントン米国務長官がミャンマーを訪問し反軍事政権=民主化の象徴的存在でもあるアウンサン・スー・チー女史と抱き合ってみせるなど、中国の南進に対する警戒感が顕著になりつつあるようだ。こういった情況を「中国の興隆、米国の衰退」ではなく、「米国諸同盟の興隆」と看做す向きもあるようだが、それは希望的観測に過ぎないとしかいいようはない。じつは「米国諸同盟の興隆」に関係なく、ソフト、ハードの両パワーによる北京の南進は続く。

 先ずソフト・パワー。洪水騒ぎも一段落した12月8日、新華社バンコク支社首脳陣は、バンコクの中心街にあり反タクシン・親タクシン両派の激突の舞台となった巨大ショッピングモールで記者会見を開き、大型写真集『中国情縁――詩琳通公主訪華三十戴記念画冊』の出版を発表した。これは「詩琳通公主」、つまりタイで国王の次に国民的敬愛を受けていると伝えられるシリントーン王女の1981年5月の初訪中以来の30年間の足跡を綴った写真集である。タイ、中、英の3カ国語による解説入りで初版は5万冊。そのうちの3千冊が王女に献本され、残りの販売収益は今回の洪水被災者への義捐金に回される。ちなみに題字は李従軍・新華社社長の揮毫によるとのことだ。

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