AQUAブランドを使った販売戦略を発表するハイアールの張瑞敏CEO(中央)(c)AFP=時事
AQUAブランドを使った販売戦略を発表するハイアールの張瑞敏CEO(中央)(c)AFP=時事

 最近、地方都市で貸し切りバスに乗って、ふとみると韓国・現代自動車製だったというケースに立て続けに出くわした。国内の大型バスは三菱ふそうや日野自動車など数社の寡占市場で、輸入車があるにしても従来は独ベンツやスウェーデンのボルボぐらいだったが、状況は変化しつつある。現代自動車は日本メーカーより10-15%安い価格を武器に、各地のバス会社に積極的な売り込みをかけ、昨年の販売台数は50台を突破したという。  少子高齢化、人口減少、長期の景気低迷などで、グローバル企業から見放された感のあった日本市場に韓国、中国、米欧企業が再び注目し、攻勢を強めている。分野は家電や自動車、高級日用品などが中心。国内総生産(GDP)の規模で中国に抜かれたとはいえ、世界第3位の経済大国の市場としての潜在力を再評価する動きといえる。しかし見方を変えれば、ホームグラウンドでも日本企業の価格競争力、商品力が低下、外国勢の浸食を許しているという状況でもある。

三洋電機の家電部門を吸収した「ハイアール」

 韓国、中国勢の浸透が最も目立つのは家電分野。冷蔵庫、洗濯機など白物家電で世界最大手の中国のハイアール(海爾)はもともと単身者向けの小型の冷蔵庫、洗濯機を得意とし、低価格品で日本市場にも参入したが、ファミリー向けなどへの展開を加速している。昨年5月に容量が10キロで実売価格が10万円を超えるドラム式洗濯機を発売。制震性能の高さなどで市場の評価が高まっている。今年1月に三洋電機の白物家電部門を吸収し、三洋の使っていた「AQUA」ブランドも合わせた2ブランドで国内市場のシェアを冷蔵庫で現在の7%から15%に引き上げる目標を掲げている。
 ハイアールは2002年に日本市場に参入したが、中国製品の粗悪イメージを払拭できず、一部の量販店が売り場の隅に置くほかは郊外型ホームセンターなどの「安売り目玉品」といった扱いで苦戦していた。だが、東京・銀座4丁目に大型のネオンサインを設置、テレビや雑誌などでも積極的な広告宣伝を展開したことで日本の顧客へも名前が浸透し、ブランドイメージが着実に高まってきている。掃除機や炊飯器などの商品も拡充しつつあり、日本市場で白物家電の総合メーカーとして戦っていく構えだ。旧三洋の商品開発力も取り込んだことで、日本メーカーは国内市場でもハイアールの脅威にさらされることになる。

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