ナポレオン、ヒトラーに続く侵略

執筆者:名越健郎2012年3月24日

 プーチン首相が約64%の得票で当選を決めたロシア大統領選挙戦では、プーチン氏の過激なレトリックが気になった。過去2回のような余裕はなく、敵と見方を分け、戦時さながらの言辞を駆使した。

 2月23日、モスクワのルイジニキ・サッカー場で行なわれた10万人の支持者集会で演説したプーチン氏は、米国を念頭に「ロシアに自らの意思を押し付けようとする外部勢力」を糾弾。「われわれは自由な意思を持つ。内政干渉を許さない」と強調。

 演説は最後にクライマックスを迎えた。今年がナポレオン軍のモスクワ侵攻を撃破したボロジノの戦いから200周年になることを想起し、レジスタンスを称賛した詩人レールモントフの詩を引用、「われわれは祖国の守護者だ。兄弟たちのように、死んでもモスクワを守る」と述べた。

 プーチン氏は絶叫しながら、こぶしを振り上げて演説を締めくくった。「ナポレオン戦争と同様、生きるか死ぬかの戦いだ。ロシアをめぐる戦いは続く。勝利はわれらのものだ」  「勝利はわれらのものだ」は、1941年のドイツ軍侵攻直後、モロトフ外相が国民向けに行った有名なラジオ演説の締めの一節。ナポレオン、ヒトラーのロシア侵攻と、反政府デモ隊や米国の選挙干渉を同列に置くすさまじい比喩だった。

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