ミット・ロムニー前マサチューセッツ州知事が共和党大統領候補の指名獲得を事実上固めたが、今後、本格化する現職バラク・オバマ大統領との大統領選挙キャンペーンの中で、オバマ選対本部や民主党全国委員会(DNC)からロムニーの政策が執拗な攻撃を受けることは必至だ。3カ月以上に及んだ共和党大統領候補指名獲得争いを通じて浮かび上がってきたロムニーの政策的脆弱性に焦点を当てて検証してみたい。

「金持ち寄り」との批判

ロムニーは弱点を克服できるか (C)EPA=時事
ロムニーは弱点を克服できるか (C)EPA=時事

 改善の兆しを示す指標が明らかになりつつあるが、米国経済は引き続き低迷しており、ロムニーはオバマ大統領の経済政策批判を選挙キャンペーンの中核に位置付けている。そうした中、税制改正も主要争点の1つとなっている。連邦議会では今月16日、年収100万ドル以上の富裕層の所得税率を最低30%に引き上げる「バフェット・ルール」を盛り込んだ税制改正法案が審議入りに必要な60票の賛成票を野党共和党の反対で確保できず、否決された。ロムニーはオバマ大統領が導入を図ろうとしている富裕層への課税強化について、米国の伝統的価値である自由経済を脅かすものであるとして反対姿勢を明確にしている。オバマ再選を阻止するためには、「経済・雇用問題」を最重要争点として位置付けて攻め続けることが、戦いを有利に展開するためにも不可欠なアプローチになる。だが、そのようなロムニーの選挙戦略の足枷となりかねないのが、ロムニー個人の資産問題や、富裕層を優遇していると見られかねない彼自身の立場である。オバマ陣営は富裕層に対する課税強化の必要性を訴える中、ロムニー自身の所得税率の低さに焦点を当て、ロムニーがいかに税制優遇措置の恩恵を受けているかを、より高い税負担を強いられている中間層に対し訴えている。  ロムニーはオバマ政権が成立させた金融規制強化法である「ドッド・フランク法」の撤廃の必要性についてもこれまで繰り返し訴えてきた。オバマ政権はロムニーの同法撤廃の立場をジョージ・W.ブッシュ政権の経済失政への回帰と位置付けてロムニー批判を展開している。大統領選挙の帰趨に多大な影響を与えることになる中間層の投票行動にこれらの議論は大きなインパクトをもたらすことは必至であり、注視する必要がある。

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