原油「輸入国転落」インドネシアの危うき未来

執筆者:黒瀬悦成2004年10月号

石油政策の矛盾を放置してきたツケがインドネシアを襲っている。このままではエネルギー危機さえ誘発しかねない――。[ジャカルタ発]インドネシアは、アジア太平洋地域で中国に次ぐ産油国で、同地域唯一の石油輸出国機構(OPEC)加盟国だ。そのインドネシアが今年三、四月、原油の輸入量が輸出量を上回り、純輸入国に転じる“異常事態”に直面した。「我が国が原油の純輸入国になったというのに、インドネシアの閣僚がOPEC議長を務めている状況はいかがなものか。原油を増産出来る見通しがないのなら、OPECに加盟し続ける意味もない」 五月下旬。ジャカルタで開かれたエネルギー・鉱物省OBの懇親会の席上、スハルト政権下で同省大臣を務めたギナンジャール退役空軍少将が一喝した。現在のOPEC議長は、現エネルギー・鉱物相のプルノモ・ユスギアントロ氏。その場に居合わせた同氏は何も言い返せず、終始うつむき加減だったという。 同省によれば、今年三月の原油輸出入は、日量三万六千バレルの輸入超過。四月には輸出入の差が九万バレルに拡大した。プルノモ氏は、「輸入超過は一時的で、我が国が純輸入国に転落したことを意味しない」と強調。しかし、インドネシアが遅かれ早かれこうした事態に陥ることは、専門家の間では以前から予測されていた。国内エネルギー需要は着実に伸びているのに、原油生産は一九九五年から十年連続で減少しており、不足分は輸入で賄ってきたためだ。

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