金正日の孤独を深める「二重の喪失感」

執筆者:草壁五郎2004年12月号

なぜ金正日は、動こうにも動けないのか。暴発の可能性すら秘めた現在の「心理」を分析する。[ソウル発]米大統領選挙でブッシュ大統領の再選が決まったが、北朝鮮は十一月十三日に北朝鮮核問題の六カ国協議に関連して外務省スポークスマン談話を発表し「問題解決の鍵は米国の(敵視)政策転換の意思にかかっている。米国がわれわれの体制変更を狙う敵視政策を放棄し、共存しようとするなら、問題はいくらでも解決できる」と強調した。 さらに、北朝鮮の金桂冠外務次官は訪朝した藪中三十二アジア大洋州局長との協議で、六カ国協議について枠組みは維持するとしながら「早期に協議を再開させる環境にはない」とし、他の五カ国が求めている第四回協議の年内開催に否定的な姿勢を示した。北朝鮮の姿勢には、米大統領選挙の結果を受けて自ら状況を打開しようとの意思が見えない。 北朝鮮の外交の「鈍さ」は、最近はじまったことではない。金正日総書記の非公式訪中(四月)や、小泉首相との日朝首脳会談(五月)以後、その対外姿勢に明確なビジョンが感じられない。 北朝鮮の対外政策はこれまで「対米」「南北」「対日」の三つを軸に展開されてきたが、日朝首脳会談以降、この三分野ともに次の展開に踏み出せていない。従来ならば、米大統領選挙後の対米政策で膠着状態が打開できないなら、対南、対日にくさびを打ち込み、日米韓三国協調路線に揺さぶりを掛けたはずだが、そうした動きも顕著ではない。

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