“危険水位”に達してしまったイラン核開発

執筆者:北村隼郎2004年12月号

英仏独の“説得”には応じてみせたものの、本当に核開発が止まるかは疑わしい。結局はイランに時間稼ぎさせるだけ――[ウィーン発]イランの核兵器開発疑惑が新たな段階にさしかかってきた。国際原子力機関(IAEA)は、十一月二十五日から始まる定例理事会で再びイラン問題を協議する。英仏独の働きかけを受け、イランは核兵器製造にも転用可能なウラン濃縮活動の一時的な停止を表明したが、核開発全般については意欲を完全には捨てていない。対イラン強硬派の米国は、疑いの目を向け続け、イラン核問題を国連安全保障理事会に付託すべきだと主張している。しかしながら、協議の場がIAEAから安保理に移っても移らなくても、関係国のそれぞれの事情や思惑から、イラン核問題の膠着は続く公算が大きい。そして、長引く膠着の先に「最悪の展開」が見え隠れし始めた。 イランが秘密裏に核兵器を開発しているのではないか、との疑惑が浮上してから既に二年三カ月がたつ。当事国は「総すくみ」状態 二〇〇二年八月、イラン反体制派組織が、同国中部のナタンズに大型のウラン濃縮工場、西部アラクに重水生産工場の二つの未申告施設があると指摘し、米情報機関もこれを確認した。イラン政府は、これらの核計画は「すべて平和目的」と反論。「核の番人」IAEAによる実態解明が翌二〇〇三年二月に始まった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。