世界市場を覆う「中国、ロシアの影」

執筆者:五十嵐卓2005年3月号

競争から守られた中国、ロシアなどの国営企業がエネルギー市場の中心に座れば、やがて世界の資源は根こそぎ買収されかねない。 世界のエネルギー市場を中露の影が覆い始めている。中国は中東、中央アジア、南米など世界各地で油田、ガス田の開発権益を矢継ぎ早に獲得、資源調達でメーンプレーヤーになった。ロシアのプーチン政権は強権的な手法で、サウジアラビアと並ぶ世界最大の産油国のエネルギー資源の再国有化を進める。中露の動きは世界のエネルギー市場を動かす論理を変質させ、市場構造を歪ませつつある。その底流にあるのは、市場原理とは異質な国営石油会社という存在である。 一月末、リビアのトリポリで世界のエネルギー業界が注目した入札結果が発表された。リビアが国内の油田・ガス田のうち十五鉱区を一九七〇年代以来初めて、外国企業に開放した入札だった。日本からも新日本石油、石油資源開発などが応札したが、最も関心を集めたのは中国の参加だった。結果は国有化前のリビアで開発経験の深い米オクシデンタルがのべ九鉱区を落札し、中国は鉱区を獲得できなかった。だが、米国の政治的影響力が及び、地理的には“欧州の庭”であるリビアの石油開発に中国企業が乗り込んできた点に、世界のエネルギー情勢の大きな変化が映し出されている。

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