あなたの手は汚れていないか

執筆者:喜文康隆2005年4月号

「現に在る時期は、私企業の時期、渾身の力をふりしぼる経済的いとなみの時期である。そうして、私企業とともに租税国家の時期でもある」(シュムペーター『租税国家の危機』)     * 堀江貴文率いるライブドアと、フジテレビの日枝久を頂点としたフジサンケイグループのニッポン放送をめぐる対決。西武グループ総帥、堤義明のインサイダー取引・有価証券報告書の虚偽記載による逮捕劇。さらには、三井住友フィナンシャルグループと大和証券グループの銀行・証券の垣根を超えた合同と、三菱東京フィナンシャル・グループとメリルリンチ証券の合弁会社設立にみられる国境を越えた金融再編劇……。 一九九〇年代には動かなかった会社をめぐるさまざまなエネルギーが、銀行の不良債権処理の一巡とペイオフ時代への移行、さらには日本経済全体の自信回復とともに、一気に噴き出てきた。それは会社・市場の枠組みが新しい時代に向けてダイナミックに変質する過程でもある。 西武の御用記者のようにいわれた人が西武批判のリード役の顔をする。日本的経営の擁護者がM&A(企業の合併・買収)が不可避であると力説する。堀江はフジサンケイグループの物理的な支配には失敗するかもしれない。しかし、間違いなくメディアに巣食う「ニセモノ」と「古い観念」を炙り出した。その意味では堀江はメディアを変えたのである。

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