液晶パネルは頭打ち、半導体では中国の猛追を受ける台湾。「独立」と「統一」の間のナローパスで経済成長を続けられるか。[台北発]春節(旧正月)気分が残る二月十八日朝、台湾メディアの政治担当記者に緊急会見の案内が入った。日本のワイドショー並みの直撃取材で売る彼らは、直ちに台北市の官庁街の一角を占める行政院(内閣)の一階玄関にカメラの放列を敷いた。そこへ二月一日に陳水扁総統から任命されたばかりの謝長廷行政院長(首相)が、大柄な初老男性を伴って二階から下りてきた。この日、副院長(副首相)に任命された呉栄義氏だ。「彼が私のパートナーとなる人物です。経済の専門知識を十分に発揮してもらいたい」。謝院長は任命理由などの質問にひとしきり答えると、一足先に執務室に戻った。「聯華電子の件にどう対処するのか」――。報道陣は呉副院長が語りはじめた儀礼的な抱負を遮るように、台湾二位の半導体メーカーである聯華電子に関する質問を矢継ぎ早に放った。 台湾独立を綱領に記す民進党の候補として初の政権交代を成し遂げ、二〇〇四年に再選を果たした陳総統の任期は残り三年余り。この日の記者会見は、陳政権が残りの任期で綱渡りの経済運営を強いられることを二つの意味で象徴していた。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。