スノーデンCIA(米中央情報局)元職員の亡命問題は、エクアドル、ベネズエラ、ボリビア、ニカラグアという中南米の反米政権が亡命先として浮上したことで、ベネズエラのチャベス前大統領の死後、反米モデルの行き詰まりが囁かれた反米左派政権の存在を改めてクローズアップした。とくに関連して、モラレス大統領を乗せたボリビアの政府専用機が欧州各国に領空通過を拒否された事件は、反米左派政権の結束を強める格好の材料となった。

 

大統領を13時間空港に留め置き

 亡命先が反米のアンデス諸国の政権と噂される中、モスクワで開かれたガス輸出国フォーラム(GECF)首脳会議に出席したボリビアのモラレス大統領が7月2日、本国へ向けて帰国の途について間もなく事件は起きた。大統領を乗せたボリビア政府専用機は、スペイン領カナリア諸島のラスパルマスを経由して帰国する予定であったが、航路に当たる欧州諸国に領空通過を拒否された。そのため、急きょオーストリアのウィーンの空港に着陸を強いられ、そこで13時間、留め置かれることになった。

 正確なところは不明だが、スノーデン氏が搭乗していることを疑った米政府の要請に従って、NATO(北大西洋条約機構)に加盟するフランス、イタリア、スペイン、ポルトガルの政府が通過を禁止する措置に出たものと考えるのが自然である。モラレス大統領はモスクワで記者団の質問に対し、亡命の申請があれば検討すると答えていたことも伏線となったといえる。だが、相手がいかに小国とはいえ、国際条約を無視し一国の主権国家の元首を乗せた専用機の通過を拒否するという判断は、ただ事ではない。同時にこの判断は、米国の機密情報の漏えい問題が国家安全保障上いかに重要性を帯びているかを窺わせ、スノーデン氏が政府専用機に搭乗しボリビアに亡命するという情報を掴んだ情報機関の杜撰さをも示すものとなった。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。