地対空ミサイルが電話とFAXだけで手に入る

執筆者:ブライアン・ジョンソン・トーマス2005年5月号

どんな相手にでも武器を売り渡す死の商人はたくさんいる。テロ組織でも簡単にミサイルを入手できることを、ジャーナリストが実証した。[ロンドン発]事の始まりは、一本の電話――。のんびりと自宅の果樹園でリンゴの実り具合を眺めていたら、突然、携帯電話が鳴った。戦争特派員をしていれば、新聞社からの呼び出しなど日常茶飯事だ。だが、話の内容にはいささか驚いた。 英『サンデー・タイムズ』紙編集局からの指示はこうだった――テロ組織に武器を流す仲介人になりすまし、実際に武器を入手できるかどうかを試してくれ――。当時は米同時多発テロ事件から二年、世界各地のテロ集団が血眼になって武器――とりわけ地対空ミサイル――を探していると言われていた。実際、十カ月前には、ケニア上空でイスラエルの民間機が地対空ミサイル攻撃を受けるテロ事件が起きていた。 国際武器取引については、大体の流れを掴んでいた。そこで早速、段取りを考えた。まず第一は、武器を流していそうな会社の選定。第二は、自分がなりすます人物の設定。第三は、武器輸出に必要な「最終用途証明書(EUC)」の入手だ。 第一のターゲットとしては、二社が頭に浮かんだ。一方は地元イギリスのボーダー・テクノロジー&イノベーション社だ。一九九五年、インドの西ベンガル州で、大量の武器が飛行機からパラシュートで落とされるという不思議な事件があった。反政府テロを展開していた宗教的秘密結社「アーナンダ・マーグ」か、あるいは極左のテロ集団か、どちらかの拠点に落とそうとしたらしいのだが、その飛行機に乗っていた一味にピーター・ブリーチなるイギリス人がいた。その男に武器を提供していたのがボーダー社だったのだ。

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