時代とともに変わった「天皇の役割」

執筆者:関裕二2013年8月9日

 天皇について考えてみたい。

 そもそも「天皇とは何者なのか」については、いまだにはっきりとした答が、出されていない。

 なぜ天皇は永続したのか、なぜ天皇に歯向かうと恐ろしい目に遭うと信じられていたのか、わからないことばかりだ。

 かつて中世史に溯って網野善彦や今谷明の論争が展開され話題になったが、意見は平行線を辿り、はっきりとした結論は出なかった。

 天皇の正体を示すことができないのは、古代の天皇の実態を知らないからだと筆者は思うのだが、逆に近代の天皇の謎を探ることで、天皇の別の一面を覗き見ることができると感じている。

 明治維新後の天皇は、長い天皇家の歴史のなかで、異質な存在であった。明治政府は、西欧の帝国主義を真似て、海外に軍勢を派遣することを画策し、天皇を利用したのだ。

 帝国主義の大義名分は、キリスト教の正義であった。世界の未開な地域にキリスト教を広め、野蛮な人々をキリスト教の高みに引き上げる必要があると考えたのだ。

 自分勝手で都合のいい考えで、平和な時代を過ごしていたアジアの国々は、次々と蹂躙され、支配され、植民地となっていった。

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