金融政策をめぐり、日本銀行と財務省の隔たりが鮮明になってきた。日銀政策委員会内で日銀当座預金残高(市中への資金供給量の目安)の引き下げ論が徐々に力を持つ一方、財務省は現行政策の堅持を求めている。 必要量をはるかに上回る資金を金融機関に供給する量的緩和政策は、金融システムの混乱を防ぐため、四年前に導入された。いまや「危機管理体制」を続ける根拠は乏しくなるばかりだが、年明け以降、財務省の「現行政策の継続」要求は熱を帯びる一方。日銀を国債管理政策の一部に組み込みたい財務省にとって、日銀当座預金の減額=金融引き締めへの転換は、国債相場下落を懸念させるのみだからだ。 日銀の政策決定は福井俊彦総裁と武藤敏郎、岩田一政の両副総裁、審議委員六人の計九人による多数決制。昨年二月から全員一致が続いてきたが、この四月六日に反対が一票出て、同月末には二票に増えた。福間年勝、須田美矢子両委員の票というのが日銀ウォッチャーの共通認識で、水野温氏委員も本音は引き下げ容認と見られている。 皮肉なことに、財務省と対立する格好の福間、須田、水野各氏の人選に深く関与したと目されてきたのは、元財務次官の武藤副総裁。「武藤副総裁が決め、福井総裁が責任を取る。他の委員は金融史に名を残すのが仕事」と揶揄される現在の日銀。「影の総裁」とも呼ばれる武藤氏の出方に金融関係者の注目が集まっている。

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