中南米を襲う「ミドルクラス革命」の波

執筆者:遅野井茂雄2013年8月14日

 やや旧聞に属するが、6月6日のサンパウロのバス料金の値上げ(約10円)反対に端を発する大規模な抗議行動がブラジルで起きた。全土で200万人に達する市民が街頭を占拠する、近年のブラジルでは経験のないものだった。来年のサッカー・ワールドカップを前にしたコンフェデレーション・カップが開催されたさ中に起きただけに、国際的スポーツ・イベントそれ自体にも批判の矛先が向けられ、注目された。市民のこうした抗議活動は、新興経済圏として台頭した中南米が景気の後退局面を迎える中で発生しており、7月にはペルーでも同様の抗議行動が起き、両国の政権の支持率が30%台まで急減するなど、政治的な影響を及ぼしている。

 

「フィエスタは終わった」

 チリに本部を置く国連ラテンアメリカ・カリブ経済委員会(ECLAC)は7月24日、今年の地域経済見通しを発表し、4月発表した3.5%成長見通しを3.0%に下方修正した。EUの長引く景気低迷と中国経済の減速の影響、加えて米国の量的緩和の縮小観測が、短期的なリスク要因として中南米経済に及びつつあることを明らかにした【リンク】。

 2013年「経済調査報告」によると、下方修正には経済規模の大きなブラジル(2.5%)、メキシコ(2.8%)の低迷の影響が大きく、好調を持続してきたチリ(4.6%)、パナマ(7.5%)、ぺルー(5.9%)でも景気減速の傾向が顕著となった。この結果、2004年から07年までの年平均成長率5.3%から、リーマンショックを挟み、2011年以降は3.4%と地域全体で2ポイント減速することになる。

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