「評定制度」が銀行につきつける退場勧告

執筆者:鷲尾香一2005年8月号

金融機関の健全性をランク付けする「評定制度」を導入した金融庁。検討段階で秘匿された文言が、真の狙いを物語っている。 ここに「評定制度の方向性について」と書かれた一枚のメモがある。金融庁が金融機関に対する検査結果を評価する新しい仕組み(評定制度)を検討するために設置した研究会の席上で、配布・回収された文書の一部だ。評定制度案が公表されたのは五月二十七日。その直前に研究会のメンバーだけに示された文書の中には、公表された制度案からすっぽり抜け落ちたある文言があった。 金融庁がこの七月から導入した評定制度は、金融機関の検査結果について、「信用リスク管理態勢」「自己資本管理態勢」「法令遵守態勢」などの九項目をAからDの四段階で評価するもの。評価が良かった金融機関に対しては、検査から検査までの周期を長くしたり、検査範囲を狭めるといった“ご褒美”が与えられ、検査を受ける側の負担が軽減される。 だが、評定制度そのものよりも、金融庁がその導入によって何を狙うのかにこそ注目すべきだ。公表案から抜け落ちた項目は三つ。(1)検査の有料化に反映(2)預金保険の可変料率に反映(3)中央銀行の貸出金利に反映 およそ評定制度とは関係なさそうに見えるこれらの項目は、一体何を意味しているのか。

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