とりあえず”最悪の事態”は回避できたが…… (C)AFP=時事
とりあえず”最悪の事態”は回避できたが…… (C)AFP=時事

 10月17日。米国経済の終末の日が喧伝されていたのに、時計の針は何事もなかったかのようにこの日をやり過ごした。米政府の借金が法律で定めた天井を突破し、米国債が利払い不能になるデフォルト(債務不履行)が到来する。そんな事態の寸前でオバマ大統領と野党共和党は手打ちをしたからだ。もちろん誰でも知っている通り、いかにも見せかけの妥協である。

 米国の不在を満喫したのは中国であり、ロシアである。バリ島で開かれたアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議の集合写真を見よう。中央で存在感を示したのは、中国の習近平国家主席であり、ロシアのプーチン大統領である。欠席したオバマ大統領に代わって、おっとり刀で駆け付けたケリー米国務長官は端っこにとどまり、いかにも影が薄い。

 鬼の居ぬ間の洗濯よろしく、 中露の首脳、なかでも習主席はアジア、環太平洋諸国の首脳との会談を精力的にこなした。オバマ政権は通商と安全保障の両面で、大切な機会を失し、むざむざ中国に塩を送る結果となった。ひとつは、米国主導で年内妥結を目指してきた環太平洋経済連携協定(TPP)である。APEC首脳会議でネジを巻こうとしていたのに、果たせなかった。

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