「欧州の病人」ウクライナの進路

執筆者:名越健郎2014年1月8日
プーチン大統領(Photographer RM / Shutterstock.com)

 1991年にソ連邦が崩壊した際、ドイツ銀行は旧ソ連を構成した15新興国の報告書を出し、「適正な面積、人口、民度の高い国民を持つウクライナの将来性が最も有望」と予測していた。ウクライナの面積はロシアを除けば欧州最大で、当時の人口は5000万人とフランスに匹敵。東部にソ連最大の工業地帯を抱え、技術者の水準も高かった。広大な黒土地帯があり、日照時間が長く、欧州最大の穀倉地帯になるとされた。同銀行は、「ロシアは広大すぎて統治が困難」と将来性に否定的だった。

 

 だが、ドイツ銀行の予測は完全に外れた。国際通貨基金(IMF)の統計によれば、2012年のウクライナの1人当たり国内総生産(GDP)は3877ドルで、世界105位。ロシアは同1万4302ドルで、ウクライナの3.7倍。旧ソ連構成国では、バルト三国のほか、カザフスタン(1万1983ドル)、アゼルバイジャン(7450ドル)、ベラルーシ(6739ドル)、トルクメニスタン(6263ドル)がウクライナより上位にいる。

 

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。