インドが着々とパキスタン包囲網を築いている。一九九九年、パキスタン側からの侵入を受けて、停戦ラインのインド側、ジャム・カシミール州のカルギルで激戦となったことを教訓とし、インドはパキスタンに再び侵入を試みる気を起こさせない環境を作ることを戦略目標に掲げてきた。 インドは、アフガニスタンをはさんでパキスタンの北に位置するタジキスタンの首都ドゥシャンベから十キロの距離にあるファルクホールに、アイニ空軍基地を建設。二〇〇四年から運用を開始している。 同基地はインドにとって初の海外軍事拠点。インド政府はおおっぴらに宣伝はしていないが、基地の近代化と補修作業は、タジキスタンへの「援助」の一環としている。 タジキスタンを飛び立った航空機はわずか数分でパキスタン領空に入ることができる。そのため、パキスタンはインドの基地使用に激しく反発しているが、インドはすでにアフガニスタンにも足場を持ち、イランとも極めて良好な関係を保っている。加えてタジキスタンに軍事拠点を構えたことで、パキスタンを完全に包囲する陣形ができあがったことになる。 昨年十二月初めに訪露したマンモハン・シン首相に同行したナラヤナン安全保障問題顧問は、ロシアのイワノフ国防相と会談。アイニ空軍基地の共同使用について合意書を交わした。会談後、イワノフ国防相は「ロシアはヘリコプター部隊と飛行隊数個を駐留させたいと考えており、タジキスタン政府とも交渉中だ」と語ったという。

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