『キャプテン翼』の偉大な功績

執筆者:星野 智幸2014年2月24日
 2010年のW杯決勝戦で決勝ゴールを決めたイニエスタ(右)(C)EPA=時事
2010年のW杯決勝戦で決勝ゴールを決めたイニエスタ(右)(C)EPA=時事

 奇妙なシーンの写真がインターネット上に出回ったのは、2012年に行われたヨーロッパ選手権(ユーロ2012)のグループリーグ、スペイン対イタリアの試合の後だった。

 スペインのファンタジスタ、イニエスタが、クロアチアの選手5人に、まるで「かごめかごめ」でもして遊んでいるかのように、丸く取り囲まれている。

 そしてその横には、もう1枚のアニメの絵。1人のサッカー少年が、敵の選手5人の円陣に閉じ込められている。翼君はどうやってこの守備陣を突破するのか? アニメ版『キャプテン翼』の中の、有名なシーンである。

 出来すぎなほどに、そっくりだった。たちまちにして、イニエスタこは現実世界に現れたキャプテン翼だとして、世界中が沸いた。クロアチア戦でもイニエスタは5、6人のディフェンダーの輪に取り囲まれ、その写真は広まった。

 バルセロナの試合をよく見ている者なら、おなじみの光景である。危険なプレーヤーであるイニエスタの動きを封じようと、敵チームの選手が何人も寄ってきて、全方向からパスコースをつぶそうとする。

 だが、それはイニエスタの仕掛ける罠でもあるのだ。自分に敵の選手を何人も引きつけておいてから、その隙間を縫って、あるいは浮き球で、フリーの味方に決定的なパスを出す。それだけのスキルがあるから使える罠だ。だから、時にはあえて敵の密集に入り込んでいく。

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