「モザイク国家」ウクライナ「劇変」の深層

執筆者:国末憲人2014年2月25日
 失脚したヤヌコビッチ大統領だが、いまだに ”仰天シナリオ説”もくすぶっている (C)AFP=時事
失脚したヤヌコビッチ大統領だが、いまだに ”仰天シナリオ説”もくすぶっている (C)AFP=時事

 ウクライナ情勢は、予想を大きく上回る速度で展開した。首都キエフ中心部を占拠したデモ隊と治安部隊との衝突で多数の犠牲者が出たのが2月18日から20日にかけてである。その翌日には野党勢力が実権を握り、大統領のビクトル・ヤヌコビッチは逃亡。22日には獄中にあった野党指導者ユリア・ティモシェンコが釈放されてキエフに戻り、群衆に迎えられた。ヤヌコビッチは自らの支持者からも見捨てられ、失脚が確実だ。群衆が求めた「革命」の勝敗は決したかに見える。

 ただ、これですべてが終わるわけではない。筆者は偶然、20日からウクライナに隣接する非承認国家「沿ドニエストル」の首都ティラスポリに滞在している。ここで受信できるウクライナとロシアのテレビニュース、キエフへの電話で聴いた状況、ウクライナと密接な関係を持つ当地の政府関係者からの情報などを総合する限り、事態の収拾にはほど遠いようだ。むしろ、ウクライナのモザイク国家としての性格が浮き彫りになり、一連の混乱がパンドラの箱を開けた面さえ感じられる。

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