クリミア半島と尖閣諸島

執筆者:2014年3月31日

 クリミアがロシアに帰属した。ロシアの黒海艦隊の母基地を「自国内」に置いたプーチンの結論がどれほど重要な意味を持っているのか。そしてこの事案は、セバストポリのロシア海軍橋頭堡だけではなく、ロシア陸軍および空軍基地の確保をも保証した。

 地理と政治との関係を説き、覇権と支配へ導く古典的・伝統的「地政学」の理屈からは、ロシアが「自国領土から地中海への最短距離の水路」を確保したことは、当然の地政学的展開と言えるだろう。このような地政学上の優位をめぐる争いは歴史的に絶えず繰り返されてきた。

 

 アメリカの海軍大国たる所以は、地政学から国家戦略を導く優れた専門家であったアルフレッド・セイヤー・マハン、ニコラス・スパイクマン、ジュリアン・コーベットらが主張した「海洋立国を目指して海軍(シーパワー)大国を築く理論」をセオドア・ローズベルトが国策に導入したことに遡る。

 スパイクマンは、ユーラシア大陸東縁沿岸部の地帯をリムランドと名付けた。アメリカが海洋における覇権を目指すには、この地域に存在する海峡・海上水路などの戦略的・戦術的要衝、そして沿岸に点在する主要都市を結んだ「真珠の首飾り」と呼ぶ連鎖を形作る要地を支配すること、リムランドに所在する諸国との同盟構築、および他方でリムランド地域諸国が結束してアメリカに立ち向かわないように諸国間対立を画策すること、さらには海外におけるアメリカ海軍基地を軍事的橋頭堡として獲得するといった戦略的作為が必須であると指摘した。

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