シラクに「十二年目の屈辱」を与えたフランス学生デモ

執筆者:アダム・セージ2006年5月号

[パリ発]一九九四年――ジャック・シラクが大統領に選出される前の年、フランスは労働法改定に対する学生たちの抗議行動に席捲され、結局、政府は法案の撤回へと追い込まれた。 そして今春、来年にはシラク大統領の引退が予想される中で、フランスは再び、学生デモとストライキによる混乱に陥った。 相次ぐ大学や高校での篭城、数十万人規模に膨れ上がった抗議デモ、公共部門のスト。事態は、若者と警察との衝突にまで発展した。 今回の騒ぎの原因は九四年当時と同じ。柔軟性に欠けることで悪名高き雇用法の改革に政府が踏み切ろうとしたことだった。それが若年層の失業率の高さに起因している点も同じだ。事実、二十五歳未満の失業率は二二・八%と、全体失業率の二倍以上に達する。 ドビルパン首相が打ち出したのは、二十六歳未満の若者を対象とした新たな雇用契約の法制化だった。 ポイントは、二年の「初回雇用期間」内ならば、企業は理由を告げずに社員を解雇できるというものだ。解雇を容易にすれば、企業は若者を雇いやすくなるだろうというのが法案の趣旨だった。 しかし、十二年前と全く同じように、法案は当の若者から完全にノンを突きつけられた格好だ。 この「CPE(初回雇用契約)」法案を福音と受けとめる若者は皆無に等しい。やっと職にありついたと思っても、雇用主の胸三寸でいつ首を切られるかわからないというのでは、ただでさえ不安定な雇用環境をさらに悪化させるだけではないかと考える者がほとんどだ。

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