一九九〇年代、中国奥地の高原に生息するチベットカモシカが、高級毛織物の材料を手に入れようと外部から入った密猟者によって乱獲され、百万頭から一万頭にまで激減した。こうした事態を憂えてボランティアのパトロール隊が結成され、密猟者と命懸けの闘いを繰り広げた――九七年、知識層の読む週刊紙『南方週末』(広州市)の記事に衝撃を受けた陸川監督は思った。「この勇敢な男たちのことを記録に残そう」。 舞台は中国内陸の青海省チベット高原、新疆ウイグル自治区とチベット自治区の間に位置する「ココシリ」と呼ばれる秘境である。ココシリはチベット語で「青い山々」、モンゴル語で「美しい娘」を意味する。 パトロール隊は九三年、地元有志により結成された。資金、武器、権限、報酬……彼らには何もない。にもかかわらず、任務は過酷だった。海抜四千七百メートルの厳寒の無人地帯で武装した密猟者を追跡しなければならない。実際、初代と二代目の隊長はパトロール中に命を落としている。一人は十発もの銃弾を浴びた遺体で発見された。 野生動物保護のため、なぜそこまでするのか。命を懸けてまで彼らが守ろうとしたものは何なのか。陸監督はそれを知るためにココシリに向かった。

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