世界のエネルギー問題も農業問題も、解決の鍵はエタノールが握る。“最前線”は大産地ブラジルと、もう一カ所、沖縄だ。「石油の世紀」といわれた二十世紀から二十一世紀に入っても、石油は世界のエネルギーの中核に座り続けている。自動車、航空機など輸送機器の燃料として石油に代わる有力な液体燃料が登場していないからだ。中国、インドをはじめ第三世界でモータリゼーションが本格化する中で、石油の存在感はむしろ高まっている。だが、今、石油への新たな挑戦者が畑の中から現れた。 エタノールである。エタノールというと化学薬品のように聞こえるが、サトウキビ、トウモロコシ、小麦、木材など大半の植物から生産できるバイオのアルコール燃料だ。新たな挑戦者というのはやや語弊があるかもしれない。第一次石油危機後の一九七〇年代からブラジル、米国などではガソリン代替燃料としてエタノールが利用され、一時はブームにもなったからだ。ただ、あくまでガソリンの補完に過ぎず、しかも八〇年代半ば以降、原油価格が長期に低迷したことからエタノールの利用は広がらなかった。 今、世界的に高まっているエタノールへの関心は、七〇年代のブームとは構造的に異なる。もちろんビジネス的には原油価格の高騰が追い風になっているのは否定できないが、将来的な自動車燃料の不足に対する不安、地球温暖化防止のための二酸化炭素の排出削減、産油国で高まりつつある資源ナショナリズムへの対抗など新しい現実を反映しているからだ。二十一世紀のエタノールブームはエネルギー革命へのステップと見るべきなのだ。

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