オーストリア郵便公社が五月三十一日、ドイチェポスト(ドイツ)、TNT(オランダ)に続き、欧州で三例目の郵便事業体の上場を果たした。上場先のウィーン証券取引所の代表的株価指数ATXが軟調にもかかわらず、公開初日となった同日の終値は二十一・七ユーロと公募・売り出し価格の十九ユーロを一四%上回る人気を見せた。 人気の背景には郵便公社が示した国際戦略がある。新株発行に伴う最大で総額六億五千万ユーロ(約九百五十億円)の調達資金は中・東欧での事業拡大に振り向けられる予定だ。公社はすでに二〇〇一年以降、クロアチア、ハンガリー、スロバキアといった近隣国に小包分野などで布石を打ってきた。 ドイチェポストとTNTが物流を中心に世界全体を主戦場にしているのと比べ、オーストリア郵便公社の中・東欧に特化した国際戦略はニッチ(すき間)狙いにさえ映る。その「ニッチ戦略」が高い評価を受けるのは、金融、エネルギー、製造業などで先手必勝とばかりに中・東欧市場に積極的に打って出るオーストリア企業に共通する特質と無関係でない。ポーランド、チェコなど中欧では欧米企業との競争が激化しているが、欧米が後手に回る旧ユーゴなどのバルカン諸国にも多くのオーストリア企業が進出を果たしているのだ。

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