V字回復を見届けて退任した中村邦夫氏(現会長)のバトンを受けて松下電器産業の社長になった大坪文雄氏。新体制となってから最初の決算発表で、営業利益で前年同期比四割増を達成、順調なスタートを切った。だが、その回復を先導したプラズマテレビが今、窮地に陥っている。国内シェア六割と圧倒的な力を誇り、今年度は世界シェアで四割を目指す計画だが、「まさにこの強さこそが問題」(大手電機幹部)とされる。松下の躍進で、パイオニアや日立など下位メーカーが脆弱化し、「ライバルの不在で逆に競争状態がなくなるため、プラズマの技術進歩が停滞する」(同)。 それ以上に、薄型テレビのもう一つの勢力である液晶テレビの存在も大きな気がかりだ。国内では液晶とプラズマテレビの出荷比率は九対一。「世界的にみて、液晶テレビのほうが、規模や伸長率など高まる傾向にある」(大手証券アナリスト)。パイオニアが破綻でもすれば、プラズマ陣営はますます退潮を余儀なくされる。このため、松下はプラズマ陣営の強化を目指し「パイオニア支援のため出資し傘下に入れることで液晶陣営に対抗する」(前出の大手電機幹部)考えだ。強者ゆえの悩みを松下はどう解決するのか、業界は注目している。

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