2011年3月の福島第1原発事故の後、初めての福島県知事選が10月9日に告示された(26日投開票)。現職知事は今任期限りで引退し、6人の新人候補者は福島第1・第2原発の「全基廃炉」と被災地の復興を掲げ、今なお12万7000人に上る避難者(うち県外に約4万6000人)の救済、子どもの健康管理への取り組み、国内での再稼働反対などをそれぞれ訴える。自民党が選挙戦敗北を避け、現職知事の後継候補支援で民主、公明、社民と相乗り。「県民党」の旗の下で原発事故をめぐる争点は沈み、被災地住民には選択肢と変化への期待が乏しい選挙となった。事故から3年7カ月が過ぎた同県浜通りの被災地では、再生の歩みが各地で壁に突き当たり、新たな難題山積が希望を揺るがす。苦闘する住民の声は候補者に届いているのか。

 

「耕土」は「山砂」に変わった

 山砂で厚く覆われた飯舘村須萱地区の田んぼ(写真は筆者撮影)
山砂で厚く覆われた飯舘村須萱地区の田んぼ(写真は筆者撮影)

 そこは、草が伸びた赤土の空き地にしか見えなかった。福島県飯舘村を貫く県道原町川俣線から山あいに入った須萱(すがや)地区。細長い谷間に沿って赤土色混じりの草原が連なっており、遠く見える集落の手前に真っ黒なフレコンバッグ(土のう袋)の山が並んでいる。8月末、村の農家と支援する研究者、ボランティアらのNPO法人「ふくしま再生の会」(田尾陽一理事長)の一行に同行した先は、昨年1月から約1年間を掛けて除染された田んぼだった。

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