それでも「二周遅れ」の三井住友銀行

執筆者:村山敦2006年11月号

「これでやっと四周遅れから二周遅れになれるな」 三井住友フィナンシャルグループ(FG)の「十月中にも公的資金を完済する」との発表を受け、大手銀行関係者の間で交わされた会話だ。 メガバンクでは三菱UFJFGが六月に、みずほFGが七月に、それぞれ公的資金を完済した。公的資金を返し終えるまでは、金融庁の厳しい監督を受け、経営の自由度が大幅に制限される。このため、「三菱UFJ、みずほに大きく遅れることなく公的資金を完済することが経営上の至上命題だった」(三井住友銀幹部)。 遅ればせながらの完済見込の発表は、三井住友銀が抱えていた不良債権の処理にようやく目処が立ってきたことが大きい。準大手ゼネコンのフジタ、グループ企業で中堅ゼネコンの三井住友建設、粉飾決算を繰り返したカネボウなど、三井住友がメーンバンクを務めた企業の不良債権処理の遅れは、同行の公的資金の返済を滞らせてきた。 中でも深刻だったのが三洋電機。しかし、今年一月、三井住友銀を中心に総額約三千億円の第三者割当増資を引き受け、財務面を補強することで再建へ一応の筋道をつけた。経営不振に陥っていたグループ企業の三井生命も、約一千億円の第三者割当増資で財務の健全性を高めたことで「三井生命が二〇〇七年度にも株式上場すれば、これまで投入した資金が大幅な利益を生む」と、気の早いソロバンを弾く声まで出てきた。

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