遅ればせのキリン 中国ビール戦争に参入

執筆者:永井隆2006年11月号

 世界最大のビール市場である中国を舞台に、キリンビールが大がかりなM&A(合併・買収)を仕掛けようとしている。 ターゲットは、中国第二位で北京では七割以上のシェアをもつ燕京ビールと、河南省を地盤に南京にも工場を有する金星ビール。キリンは両社に資本参加する交渉を水面下で重ねている。キリンは連結対象となる発行株式の二〇%、できれば中国政府から外資優遇を受けられる二五%を取得したい考え。取得金額は燕京だけでも四百億―五百億円になる見通しだ。 中国ビール市場は成長を続けている。二〇〇五年の生産量は日本の五倍近い約三千六十一万キロリットル(前年比一〇・三%増)。その成長性を見込んで、ベルギーのインベブやオランダのハイネケン、バドワイザーで有名な米アンハイザー・ブッシュなど世界の「巨人」企業が進出。最近はインベブが雪津ビール(福建省)を約八百四十億円で買収するなど大再編が進み市場競争は激化。あおりで、日本の大手四社のうちサッポロビールがすでに撤退している。 キリンの中国戦略は、「遼寧省などの東北三省、個人所得が高い沿海南部の広東省、そして中国経済の中心都市である上海を攻める」(キリン首脳)のが基本。サントリー、アサヒビールと比べ中国市場で出遅れていたが、この二年間で約百九十億円を投じて巻き返しを図っている。遼寧省のビール会社への二五%出資、広東省珠海にあった合弁会社の完全子会社化および最新工場建設、上海に販社機能を有する持ち株会社(総本部)を設立、と矢継ぎ早に手を打つ。

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