台湾の陳水扁総統の呉淑珍夫人が十一月初め、横領容疑で起訴されたが、起訴状や釈明から、陳総統が二人の人物への対処を誤った様子が浮かび上がった。 一人はほかならぬ呉夫人。今回の起訴は、公務と関係ない領収書を集めて総統府機密費を詐取したという手口が問われたものだが、百三十二万台湾ドル(四百七十万円)の指輪など数々の贅沢品の購入も明るみに出た。 貧農の出である陳総統は良家出身の呉夫人を反対を押し切り娶ったうえ、政治テロとされる事故から守りきれず下半身不随にさせた負い目がある。「かなりの恐妻家」(総統府元顧問)である陳総統は、夫人の奢侈な生活を止められなかったようだ。 もう一人は李登輝前総統だ。李氏は「奉天」と呼ばれた総統府の裏工作の基金を「善意で陳総統に引き渡したが、総統は潔しとせず“表”の国庫に繰り入れてしまった」(同)。結果として「自由に使える機密費が減ったので、妻らの領収書で資金をつくった」(陳総統)という。「妻が一審有罪なら辞任する」「資金の私的流用はなく、中国との宣伝戦に使った」との釈明を受け、与党・民進党は陳総統支持を確認した。しかし、かつての支配政党である野党・国民党は「機密費なら外交部(外務省)や諜報機関にもある。何で夫人の領収書が出てくるのか」(党首脳)と納得しておらず、陳総統の苦境は続く。

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