「安倍政権は格差問題の是正を名目に補正予算を組むらしいぞ」 十一月初旬、そんな噂が霞が関を駆けめぐった。一九六五年からの「いざなぎ景気」を上回る戦後最長の景気回復で、今年度の税収は数兆円規模の上積みが確実視されている。その「上振れ分」が補正予算の財源になるというのが噂の根拠で、財務省は慌てて火消しに回った。 安倍晋三首相や自民党の中川秀直幹事長は、税収の「上振れ分」を高い成長率の呼び水とすべく法人減税に使うとみられる。そのため、冒頭の観測は空騒ぎに終わりそうだ。とはいえ、小泉政権下で厳しく制限された補正予算の復活が取り沙汰された背景に、安倍政権が外交や国会運営でみせる“柔軟路線”への期待があるのは間違いない。「柔軟さが裏目に出て小泉政権以前のバラマキ財政に戻らなければいいのだが……」。政府関係者の中からそうした懸念も聞かれるなか、「内閣の本質がわかる」(与党幹部)と注目されているのが、十二月に策定する二〇〇七年度予算案のとりまとめだ。 国の債務残高(=借金)は今年三月末で八百二十七兆円にまで膨らんでいる。この異常な状態を正すための第一歩として、政府は今年七月に決定した経済運営の指針「骨太方針二〇〇六」で、〇七年度からの五年間で最大十四兆三千億円の歳出削減を掲げた。この削減額を達成できれば、五年後には国と地方の基礎的財政収支(プライマリー・バランス)を黒字化させ、少なくとも借金の増加には歯止めをかけられる。来年度予算は、この財政健全化計画の「元年」にあたるのだ。

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