台湾で昨年上映された映画『行動代号:孫中山(邦題:コードネームは孫中山)』という映画のDVDが2月に発売されたので、早速、『博客来』という台湾のネットショップで取り寄せた。なかなかいい映画だった。5段階評価ならば4か5の星をあげたい。ちょうどこの原稿を書いていたら、大阪アジアン映画のコンペティション部門でグランプリと観客賞をダブル受賞した。台湾の映画賞である金馬奨で最優秀脚本賞も取っている。台湾映画のレベルの高さを示す一作だ。

 タイトルの「行動代号」とは「作戦のコードネーム」という意味になる。孫中山は台湾や中国での孫文の呼び方だ。

 給食費や学級費が払えない貧困家庭の子供たちが団結して「作戦」を立て、小学校の体育館の倉庫に運動用具などと一緒にほこりをかぶって放置された孫文 の銅像を盗み出し、売り払ってお金を稼ごうという話である。

 90分あまりの映画のなかで、中国革命の父として中国近代史で大きな功績を残し、台湾でも国民党一党独裁時代に神格化されていた孫文=国父について、子供たちは一度もその歴史的、政治的な存在意義について言及しなかった。かつては崇拝の対象だった孫文がいまや単なる記号となり、こうした娯楽作品で「消費」され得ることを伝えるため、制作側があえてそうしたとしか思えない。

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