官僚に“借り”を作ってきた政治家が、必死で守る天下り制度。ようやく改革の端緒をつかんだからには、大胆かつ緻密に仕上げる必要がある。 安倍内閣と自民党がにらみ合いから一転、公務員の「天下り規制」についての基本合意にこぎつけたのは四月十一日のこと。官僚の再就職の斡旋を内閣府に設置する「官民人材交流センター(=仮称、いわゆる新人材バンク)」に一元化することだけは、ひとまず決まった。正念場はこれからだ。決定したのは二〇〇八年のセンター設置と、それから三年以内の一元化という大枠のみ。法案を作る過程で、最大の既得権を奪われる官僚たちの“骨抜き工作”も予想される。「調整型」と評されてきた安倍晋三首相の突破力が試される。     *「押しつけ的な再就職(天下り)を根絶する」 安倍首相は一月二十六日の施政方針演説で公務員制度改革をそうぶちあげた。「天下り規制」をめぐる動きが過熱したのは三月以降。背景には、七月の参院選に向け、民主党の支持団体である労働組合の全国組織「連合」を揺さぶり、票田を切り崩す政治的な狙いもある。連合は、「政・官・業の利権構造に組み込まれた行政とそれを支える公務員制度は機能不全を露呈している」としてかねてより制度改革を求めていたからだ。安倍政権は公務員制度改革を社会保険庁改革、教員免許更新制度とならぶ「三点セット」と考えていた。

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