マカオに呼べるか カジノ好きのビジネス客

執筆者:八ツ井琢磨2007年10月号

 マカオで八月末、米ラスベガス・サンズが二十四億ドルを投じて建設したカジノリゾート「ベネチアン」が開業した。イタリアの水の都ベネチアを模した造りで、東京ドームより広い世界最大級のカジノのほか、ホテル、劇場、高級ブランド店などを備える。隣接地にもフォーシーズンズやシェラトンなどホテル七軒が建設される予定で、数年後にはベネチアンを核とした一大リゾート地が誕生する。 サンズなど各社が強気の投資を続けるのは、カジノでカネを落とす中国本土の観光客が急増しているため。二〇〇三年、団体旅行に限っていた本土観光客に、個人旅行を解禁。同年六百万人だった本土観光客は〇六年に千二百万人へと倍増した。いまや本土からの客がマカオ観光客全体の約半数。本土からの半分は個人旅行者だ。 観光客だけではない。マカオ政府は、不動産購入など百五十万パタカ(約二千三百万円)以上の投資を条件にマカオへの移住を認める「投資移民」制度を実施している。〇五―〇六年の移民件数は計五千超。これにより、おもに本土から一千億円程度がマカオに流入したことになる。 人口五十万のマカオに本土から押し寄せるヒトとカネは、経済発展の原動力となっているが、地元社会では“ひずみ”も生じている。個人旅行を装った本土からの違法労働者が流入し、地元労働者の賃金水準は頭打ちに。カジノディーラーなどとして働く高所得層との間で格差が広がっている。不動産購入を条件とした移民制度は投機を煽り、不動産価格がここ数年で二倍近くに高騰。住宅費が庶民の家計を圧迫している。

記事全文を印刷するには、会員登録が必要になります。