日本通運と手を結ぶ日本郵政。それでも宅配便市場がままならなければ、“奥の手”が……。喜ぶのは外国勢ばかり――。 消費生活に張りめぐらされた目に見えない網、それが物流だ。特に馴染み深いのがドア・ツー・ドアの宅配便サービスだろう。民間企業がしのぎを削るこの分野で、民営化して間もない日本郵政(四つの事業会社の持株会社)がいきなりの攻勢に出た。拙速ともいえる拡大志向をつぶさに検証すると、郵便民営化が物流業界と私たちの暮らしを大きく変える可能性が浮かび上がる。     * 十月五日、ホテルオークラ東京。郵政民営化で誕生した持株会社、日本郵政の西川善文社長は百人近い報道陣の注目を一身に集めていた。民営化から五日目にして迎えた最初の晴れ舞台。日本郵政が国内陸運最大手である日本通運との宅配便事業の統合を発表したのである。 両社の基本合意によると、二〇〇八年十月をめどに共同出資会社を設立し、日本郵政の「ゆうパック」と日通の「ペリカン便」を事業統合。新会社への日通の出資は三分の一ほどの割合にとどまる見込みで、日本郵政が日通の宅配便事業を事実上取り込む形となる。 郵便事業を通じて全国津々浦々に張りめぐらせた集配ネットワークを有する日本郵政と、大口配送に強く分厚い法人顧客層を持つ日通の組み合わせ。日通の川合正矩社長は「メリットを一番発揮できるパートナー」と胸を張ってみせる。現在は両社が別々に走らせている幹線輸送トラックを一本化したり、集配網をきめ細かくすることで「コスト削減効果は計算していないが、間違いなく効率は上がる」(川合社長)のだろう。

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