「白い恋人」や「赤福餅」など、食品表示をめぐるJAS法(農林物資の規格化及び品質表示の適正化に関する法律)違反が相次いでいる。罰則強化や適用業種の拡大を求める声もあがっているが、これぞ農水官僚の思うつぼだ。 JAS法は戦後間もない一九五〇年に粗悪な食品を排除する目的で制定された。食品の品質表示の対象を大幅に広げる法改正が行なわれたのは中央省庁の再編が取り沙汰された九九年。農林水産省は強い政治力を使って再編を免れたばかりか、「単なる生産者行政から消費者行政に大きくウイングを広げた」(元事務次官)。 改正JAS法はそのための「武器」だったが、生産者行政に染まりきった農水省が消費者保護を手がけるというのは最初から二律背反。生産者や流通業者の「性善説」に基づく改正JAS法はまったくのザル法で、業者間取引には適用されないという「安全地帯」もあった。 このため、食肉偽装を続けたミートホープ社はJAS法では処分できなかった。しかし、ミートホープの暴走を許した真の原因は法の不備ではない。農水省はミートホープからの内部告発を何回も受け取りながら黙殺していたのだ。業者に甘い農水省の体質こそ偽装続発の根源。農水省に消費者保護行政を任せているかぎり、JAS法を強化したところで食品偽装はなくならない。実際、罰金は過去に一度強化(法人の場合、五十万円以下だったものが一億円以下にまで増額)されたが、その後に偽装はむしろ増加している。

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